―本記事は情報拡散を目的に作成しています。ご紹介している文書は、各情報サイトおよび各企業様のホームページ等から引用させていただいています―

プラチナ(白金)の現物相場は2月以降、1107~1336ドルのレンジ相場が続いている。欧米で新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、経済活動が再開し、景気回復期待が強いが、インドやブラジルで変異株の感染拡大が続き、先行き不透明感が残っている。
原油の上げ一服やインフレ懸念による株安もプラチナの上値を抑える要因となった。原油は需要回復期待や米国のパイプライン停止が支援要因となったが、イラン核合意の再建協議で供給拡大の見方が出ると上げ一服となった。
一方、株式市場は原材料や労働力の不足を背景としたインフレ懸念で利上げ前倒しの見方が出て下落した。ただ、インフレは一時的との見方が出ており、各国中銀が低金利を維持するとみられている。5月の欧米の製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は好調な内容となっており、景気回復期待が高まれば、プラチナは中長期的にレンジ上限を試すとみられる。
●プラチナは今後発表される経済指標を確認
労働市場の回復一服や個人消費の伸び悩みでプラチナの需要伸び悩みが懸念される。4月の米雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比26万6000人増と事前予想の97万8000人増を大幅に下回る伸びとなった。4月の失業率は6.1%と前月の6.0%から上昇した。労働力不足が背景にあり、失業手当の支給が終了する9月まで緩やかな雇用ペースが続くとの見方もある。
また、新型コロナウイルス対策の現金支給の効果が薄れ、4月の米小売売上高は前月から横ばいとなり事前予想の1.0%増を下回った。ただ、貯蓄が過去最高水準にあり、経済活動が再開すれば今後数ヵ月間で加速する可能性が高いとみられている。
一方、5月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は61.5と、同統計が改定された2009年10月以降で最高となった。好調な国内需要が押し上げた。事前予想は60.2。今後発表される経済指標が好調な内容になれば、景気回復見通しからプラチナの安値は買い拾われるとみられる。
●WPICは3年連続の供給不足を見込む
ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の四半期報告によると、2021年第1四半期は世界経済の回復による需要増加や投資需要の継続を受けて1トンの供給不足となった。世界の景気回復に伴い、工業、自動車、宝飾品を中心に需要が増加した。また、投資需要は前年から2トン増の4トンとなった。自動車触媒における代替需要と水素テクノロジーにおける使用が投資家から注目されたことが指摘された。2021年は需要が5%増の250トンと予想され、5トンの供給不足と3年連続の不足が見込まれている。
ポール・ウィルソン最高経営責任者(CEO)は「今四半期はモメンタムが高まり、景気は加速している。ただ、依然として経済は制約されており、世界のパンデミック(世界的大流行)が解決されるまでにはさらなる紆余曲折があるかもしれないため、まだ楽観することはできない」と述べた。
●英国と南アのプラチナETF残高が増加
プラチナETF(上場投信)残高は5月21日の米国で39.37トン(4月末39.39トン)、20日の英国で19.48トン(同19.42トン)、21日の南アフリカで16.71トン(同16.51トン)となった。景気回復見通しを受けて英国と南アで投資資金が流入した。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、5月18日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万5814枚となり、2月16日の3万6577枚をピークとして縮小。レンジ相場が続くなか手じまい売りが出た。景気回復見通しが強いなか、どのタイミングで新規買いが入るかを確認したい。