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ウクライナ危機に続くのはエネルギー危機、ロシアの報復制裁は輸出停止か?

―本記事は情報拡散を目的に作成しています。ご紹介している文書は、各情報サイトおよび各企業様のホームページ等から引用させていただいています―


ロシアがウクライナに侵攻した。国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの銀行が排除されるなど主要国は対露制裁を強化しているが、ロシア軍はウクライナでの攻勢を緩めていない。先週、ザポリージャ原子力発電所が占拠された。この発電所は欧州最大級である。ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアが侵略した理由の1つである北大西洋条約機構(NATO)加盟を、ウクライナはもはや主張していない」と述べたが、ロシアの軍事行動に変化があるのだろう。


●禁輸措置で原油の奪い合い


 プーチン大統領が軍事侵攻の最終的な目標をどこに定めているのか不透明であり、西側の経済制裁が今のところ軍事行動を抑止できていないとなれば、西側は制裁強化を検討しなければならない。ロシアとの石油取引の禁止が避けて通れなくなっており、米国と英国はロシアからの原油輸入の禁止措置を発表した。ただ、通常時でロシアの輸出量は原油が日量470万バレル、石油製品が同280万バレル規模と、世界の需要の約8%に相当する。経済制裁や自主的なロシアとの取引停止で需給がひっ迫しているなかで、欧州や日本なども賛同した協調禁輸となれば更なる混乱は避けようがない。


 主要国の禁輸によって、ロシア産以外の原油の奪い合いがさらに強まるが、報道によると欧州連合(EU)は10~11日の首脳会合で、ロシアからの石油、石炭、天然ガスの依存を段階的に減らすことで合意する見通しである。EUはロシアからの輸入が、天然ガス・石炭で全体の約半分、石油が三分の一を占めており、禁輸は事実上不可能であることから、長期間に渡って段階的に減らすということで米国の禁輸要請を受け流すようだ。世界経済にとって諸刃の剣である禁輸は計画段階で頓挫しているといえる。欧州が米国に追随しないなら意味は薄く、主要国は次の制裁を模索することになるだろう。


●ロシアからのエネルギーが途絶すればパニックに


 1バレル=100ドルの節目を軽く超えた原油相場は世界経済をリセッションの瀬戸際へ追いやっている。米国の石油需要は日量2000万バレル規模と他国の追随を許さないほど突出しており、相場の暴騰による経済的負担は大きい。米国はイラン核合意再建を早急に成し遂げて、イランに対する制裁を解除し、同国の原油生産量を回復させる必要がある。イランの生産量は日量100万バレル超上向く余地がある。ロシアと距離感のかなり近い独裁国家であるベネズエラにも米国は接触しており、一滴でも多くの原油を流通させようと必死だ。石油輸出国機構(OPEC)プラスの枠組みから離れて、サウジアラビアなどが米国の増産要請を受け入れるかどうかも目先の焦点だが、イランやベネズエラ、サウジが増産しても供給不足の需給がバランスするには不十分である。ロシアの供給を代替できる産油国は存在しない。エネルギー市場だけを見れば、主要国を追い詰めているのはロシアである。ウクライナ以外への間接的な攻撃が始まったかもしれない。


 イラン核合意の再建協議は最終局面にあるものの、ロシアはウクライナ侵攻に関連した対露制裁がイランとの様々な取引には適用されないことを書面で確約するよう要求した。米国はこの要求を一蹴したが、ロシアがエネルギー市場を混乱させようとしていることは明らかだ。ロシアはイラン核合意の参加国である。同国のノバク・エネルギー相はロシア産の石油を拒絶するならば価格の高騰は予測不能であり、1バレル=300ドルもありうるとの認識を示したほか、対露制裁と同等の行動を取る権利がロシアにはあると発言し、ノルド・ストリーム1による供給停止を警告した。プーチン大統領はレアメタルの輸出禁止を発表しており、西側に対してエネルギー供給の途絶という報復制裁を意識させている。


 ロシアがノルド・ストリーム1を経由した供給を停止するならば、欧州の天然ガス市場はパニックに陥る。欧州各国は天然ガスによる発電を石油に置き換えるしかなく、原油相場も再び暴騰するだろう。ロシアが原油や石炭も含めてエネルギーを売らないという選択肢を選んだ場合、西側に対抗手段があるのだろうか。ロシアはエネルギー市場を暴騰させ、ロシアに敵対する主要国を翻弄することが可能である。サウジアラビアも原油価格をたびたび武器として利用してきたが、今回はロシアのようだ。ただでさえパニックにある相場で恐怖がまん延すると、1バレル=200ドルは近いか。あるいは通過点か。



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